天使の羽根
「あ、あたしこそ、ごめんね……あたしの我儘で穂高を引き留めちゃったら、ここで生きてる人達、せっかく穂高が繋げる未来を壊す事になるもんね……」
「母さん」
「そんな事出来ないよね……」
項垂れていた顔を上げ、史恵は思いっきりの笑顔を穂高に向けた。
「あたしは平気。穂高が元気で、幸せならいいの……穂高を遠くにお嫁に出しちゃったと思えばいいんだもん……もう二度と会えなくても、穂高さえ幸せならそれでいいの」
「お嫁って……」
「いってらっしゃい穂高……元気でね」
言いざま、史恵は穂高の髪をくしゃりと撫でると、踵を返すと、急いで玄関を出ていった。