天使の羽根

「あ~御夕飯はテーブルの上に置いといたからねぇ~」

 史恵の叫び声がフェードアウトしていく中、玄関が閉まる音が響いた。

「ばっかやろう……」

 穂高は震える手に持ったビールを一口飲んだ。

「苦っ……」

 悲しげな瞳をぶら下げてそう言った穂高は袖口で口を拭うと、そのまま飲みかけのビールを一気にシンクへと流した。


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