恋する一歩手前
私、渡瀬 綾乃
高校一年生
好きなものは、シンプルなモノ
嫌いなものは、
自分の利益にしか動かない人間。
なんて、ベタな自己紹介をしてみるけど
皆、関心なんて一切無いようにみえる。
一年生の立冬、転校初日。
自己紹介なんてしなくてもいいと思う。
必要ない。
私は、目立たないように
空気かのように生活がしたいだけ。
誰とも関わらず、無関心に
「ん、んじゃあ‥一番後ろの窓際に
空いている席に座ってく、くれるかな?」
担任の吃りながらの言葉にコクリと
頭を縦に揺らし指定された席に座る。
『ぁ、んじゃ、自習で、ですので‥』
という、担任の声に誰もが反応せず
皆、お喋りに夢中だ。
クラス内を見渡すには、絶好の席。
日当たりも良好、
授業中の居眠りに最適だ。
まぁ、授業という授業がこの学校に
存在するのならばの話だけれど。