甘く、優しく、ときには苦く
さっきから、
ずっと見つめられている状態。
たぶん、気になっている相手に見つめられると
誰でも恥ずかしくなってくるでしょう?
「すいません!!
藤岡先生じゃ、ありませんでしたか?」
わたしは、限界のため少し視線をそらし
わざと返答を促すような会話を投げかけてみた。
「い、いえ。藤岡です。
知っててくれてるなんて、驚きました。」
声、思ったより、高いんだ・・・
透き通るような、少年合唱団に所属してそうな
そんな声。
「知ってますよ♪
私、お客さんの顔と名前を覚えるのだけは得意なんです!!」
そう言って笑ってみると
彼も、答えるように一瞬だけ頬をゆるめた。
あ、笑った・・・
初めて、見た。