甘く、優しく、ときには苦く

さっきから、
ずっと見つめられている状態。


たぶん、気になっている相手に見つめられると
誰でも恥ずかしくなってくるでしょう?



「すいません!!
藤岡先生じゃ、ありませんでしたか?」

わたしは、限界のため少し視線をそらし
わざと返答を促すような会話を投げかけてみた。




「い、いえ。藤岡です。
知っててくれてるなんて、驚きました。」

 
声、思ったより、高いんだ・・・

透き通るような、少年合唱団に所属してそうな
そんな声。



「知ってますよ♪
私、お客さんの顔と名前を覚えるのだけは得意なんです!!」

そう言って笑ってみると
彼も、答えるように一瞬だけ頬をゆるめた。


あ、笑った・・・

初めて、見た。







< 10 / 92 >

この作品をシェア

pagetop