甘く、優しく、ときには苦く
彼女は鈴村 陽菜。
俺がこの病院に来た時からもう
あのカフェで働いていた。
先輩の医者たちが言うには、彼女はこの病院のマドンナらしい。
優しくて、なんでもよく気がついて
ちっちゃくて可愛い。
それから、あの笑顔。
あの笑顔を見たら、また頑張ろうとやる気になれる。
俺も、彼女に元気をもらってる一人だった。
けど、俺は彼女のことを知っていても
彼女は俺の存在なんて絶対知らないと思っていた。
この病院に来て、まだ1年目だし。
それに、俺は自覚があるくらいに地味で口下手だ。
話したのは、今日が初めてで。
それどころか、まとみに彼女の顔を見たのも今日がはじめて。
俺は、女性が苦手で
話すとき
いつも俯き気味になるから。