甘く、優しく、ときには苦く


「抱きついてみても、いいですか?」

「え?」


「抱きつきたいんです。
恋人の特権でしょう?」


「じゃあ、どうぞ。」

「失礼します。」


立ち上がって、俺の横に来たと思うと
ゆっくりと腰に手をまわす。


彼女の髪は、意外にやわらかくていいにおいがする。


「あったかい。
藤岡先生の、心みたいです。」


そう言いながら、もっと強く抱きついてくる。


女性って、優しい。

触れると、温かい気持ちになる。
鈴村 陽菜だからなんだろうか。


「俺も、君を抱きしめていると温かくなれます。」

「同じですね。」


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