100回目の告白



執事服をきた、俊輔は決して表情を崩さない。
だけど、一瞬揺らいだその心を、あたしは見逃さなかった。

俊輔はグッと拳を握り、笑顔を見せた。


「……わかりました。では準備してきま…」
「待ちなさい」



お嬢様らしい口調であたしは言う。




「……室井」
「はい」
「あなたはわたくしの言うことだけを信じて、わたくしの言うことだけを聞いていればいいの。あなたの主は、誰?」


俊輔は膝まずき、あたしを見上げる。


「……もちろん、あなた様でございます…凜お嬢様ただひとりでございます」


きゅっと口を結び、俊輔は言った。


「そう、わたくしよ。あなたはわたくしの“専属執事”。わたくし以外の言うことは、信じなくていいのです。聞かなくていいのです」

「………!」


俊輔が一瞬目を見開いたような気が、した。



「わたくしの傍から離れないこと。いいわね?」
「…もちろんで…ございます…」
「ならば、よろしい。準備してきなさい」
「…はい…失礼…いたします…」




俊輔に、伝わったかな?
“お嬢様”から“執事”へ言った言葉の本当の意味。





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