100回目の告白



『俊輔っ!しゅーんーすーけーえ』



あたしは呼んでも呼んでも振り向いてくれない俊輔を追いかける。

やっと追い付くと、俊輔の手を握った。


『捕まえたっ!もー俊輔、なんで無視……』
『俺、俊輔じゃないけど?』



振り向いた相手は――…


玲だった。



『………れ…れ、い』
『俺のことすきって言ったくせに間違えるの?』


冷めた瞳で言う玲。


『……玲…!違う、違うの…!』


あたしは顔を赤く染め、手を振り払って歩く玲を追いかける。


『玲…!いまのは…』
『なにが違うの?』
『…え…』
『俺を俊輔と間違える。てことは、もう俊輔の存在のほうが大きいんじゃないの?』

あたしを見下ろしながら、玲は距離をつくるためにはなれた。


『…ち…違うよ、俊輔は……!』
『もういい、聞きたくない。そんな半端な凛、要らない』
『…要らないって……』


要らない、その言葉にあたしは動きを止める。


『もういいよ』
『待って!待ってよ、玲、ねえ……』


あたしが必死に追いかけると、玲はふたつに分裂した。


『…………! れ…い…?…玲ーっ!』
『凛』


優しい、心地よい声。


『……俊輔…?』
『そうだよ』


俊輔はにこっと笑った。
そんな笑顔に安心しつつ、あたしは玲の行方を聞いた。


『俊輔、玲は?!』

すると、俊輔はするどい目付きになって、

『なんだよ、凛』

と、言った。


『………え……?』
『さっきは玲と俺を間違えたくせにどっちなんだよ』
『…そ…それは…』
『また選ばないんだろ。もういいよ』


俊輔もまた、去っていこうとする。



『さっきは、たまたま…っ!あたしは玲と俊輔、見分ける自信はあるわ!』





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