女子高生と詐欺と嘘
2call
梅雨も明けた七月某日。
俺は彼女に会う為に、新宿へと向かった。

あれから色々シュミレーションしたものの、結局昨日の夜に再び電話を入れ、急用で行けないから代わりに友人を行かせるということを伝えた。
さすがに居る筈のない人間に、すんなり金なんか渡す訳がない。

それにしても、夜しか縁のない街だと思っていたから、昼間に来ると見方もかなり変わってくる。
東口から出て歩き、待ち合わせ定番の大画面の前では、夜も昼も関係なく人が溢れていて何時見ても厭きない。

俺の実家は田舎だった。
少し奥に行けば山や畑だってある。
小さい頃は川に入って遊んだりもしたなぁ、と柄にもなく思い出してしまった。

その反動なのか、東京の人の多さに最初は驚いたものの、いつしか胸のワクワクを抑えられなくなっていた。
今ではすっかり都会人かぶれ。
いや、意外と田舎者程こうなってしまうのかもしれない。


「!」


駅からの人の流れの中に、彼女らしい服装を見つけた。
セミロングの黒髪に、ふわふわしたワンピース。
ホスト時代に女性の服装は色々と見てきたが、その格好は彼女にとても似合っていて可愛い。
果たして目印の役割を果たしているのかは謎だが、左手首に付けられたピンク色のシュシュも確認できた。


間違いない、彼女だ。

横断歩道を渡り、こちらへ向かってくる。

辺りを少し見渡して、鞄から何かを取りだそうとしていた。

たぶん俺に電話を掛けるのだろう。
卑怯にも俺は、彼女に自分の容姿伝えていなかったからだ。
携帯電話を取り出したのを見計らい、俺は少し低めの声で彼女に声を掛けた。
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