死の使い方Ⅱ-W/z 4 U-
英康は迷っていた。


カエデが忘れていった封筒を握り締め、真実をナオヒロに告げるか告げないかを。

今の段階では、まだナオヒロは何も知らないだろう…。


カエデとしても、もしこのことを告げるなら、たぶん本人の口から言いたいだろう。


しかし、カエデはナオヒロに何も告げずに、帰るつもりでいるのかもしれない…。


英康は、考えれば考える程分からなくなっていた。


真実を知ることも、大切。

しかし、その先にあるものは不幸だ。

また真実を知らなくても、不幸なのかもしれない。


ナオヒロの為に、カエデの為に、と思っていても本当は自分が傷付く二人を見たくないだけなのかと思う、英康。


二人のことは、二人が決めればいい。


この先、後悔しない生き方をしてくれるなら。


まだまだ、二人とも若い。

いくらでもやり直しが出来る。


何かあったら、助けてあげることも助言することも出来る。

若い内は、沢山恋をして沢山傷付いて、少しずつ強くなっていけばいいんだ。


― 皆が皆、俺の様な生き方をする訳じゃない。
そう心で決めた、英康。



英康は、ナオヒロの前に握り締めていた封筒を置いた。




< 50 / 78 >

この作品をシェア

pagetop