死の使い方Ⅱ-W/z 4 U-
「ナオ…。もし中を見たとしても、お前には何も罪はない。ただし、お前にその覚悟があるならだ。その時はもう、俺は何も言わないよ…」
英康は涙を堪え、ナオヒロから視線を外した。


「覚悟…」

「あぁ、そうだ。覚悟だ。男は誰かの為に、覚悟を決める時がくる。遅かれ早かれ。その覚悟から逃げるのも戦うのも、その人の自由だ。ただ、逃げるのも一つの手だがそこに残るものは、後悔だ。だからと言って、覚悟を決めて戦うことも果てしなく険しい。やらずに後悔するより、やって後悔する方がいいというが、俺には本当のところは分からない。ただ俺は、覚悟を決められずに未だに後悔を引きずって今も生きている。ナオには、俺みたいにはなってほしくないんだ。だからと言って、辛い思いもさせたくないのも事実。ナオの正直な気持ちで、どうしたいかを決めたらいい…。すいまん、お前の力になれなくて…」
英康はナオヒロに、頭を下げた。


「ヒデさん…」
ナオヒロは、英康の言葉で何が書いてあるのかが、なんとなく察しがついた。

でもナオヒロは、真実を知りたかった。

この封筒の中に、見たくもない事実が書かれていたとしても。


ナオヒロは、封筒を握り締める。





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