死の使い方Ⅱ-W/z 4 U-
「カエデ…」
ナオヒロの顔が近づく。

― ナオちゃん、好き。大好きよ。でも…

「だめ…。ごめんなさい…」
私は、ナオヒロから顔を背けた。
そして、ナオヒロに抱き締められていた腕を離した。

「カエデ…?」
淋しそうな瞳で、私を見るナオヒロ。


「ごめんなさい…。私…もう…」
言葉が続かない。
涙が溢れ、ナオヒロの顔がぼやける。

ポロポロ涙が、後から後から溢れ出す。

ナオヒロの前では、泣かないつもりでいた。
なのに、言葉の代わりに涙が溢れる。


― 私を選ばないで…
最後だけど、やっぱり傷付くのは怖い…



「カエデ…。俺、お前のことが好きだ。昨日、初めて会ったばっかりで、可笑しいかもしんないけど…。俺、カエデが好きだ!」

― 私もよ、ナオちゃん…。

何度も何度も、心の中で叫んだ。


「ありがと、ナオちゃん…。でも、私よりナオちゃんには…もっとふさわしい人がいると思う…。ナオちゃんには…」
そう、ナオヒロには未来がある。
でも私は、そのナオヒロの未来にはいない…

ナオヒロの気持ちで、私は十分だった。

そのナオヒロの気持ちがあれば、私は…




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