出世払いでご褒美を!
やつはいきなりやってきた
ぼくの名前は小林二葉(こばやしふたば)、今年で高校3年生になる若さあふれる17歳男子である。
こうやって書くと希望にあふれている感じがするけど…。
現実は厳しい。
不況で高卒の就職率はみるに耐えない。
ここ愛知県名古屋市はなんとなく街っぽくなっているけど、高卒で働けるところはそんなにない。
いや、性格にいうと、選びさえしなければ仕事はあるんだけど…。
これから社会に羽ばたいてゆく若者に対して "仕事を選ぶな!" というのは無理な話だと思わないだろうか?
今の時代、高卒ぐらいじゃいきなり好きな仕事ができないことはわかってる。
ならばせめて "給料の高い仕事につきたい!" と思ってもバチはあたらないだろう。
そう思っていろいろ調べてみた。
でもやっぱり現実は厳しかった。
自分の進路と向き合ってわかったことは、目の前にある厳しい現実だけだった。
ぼくはこのままつかれきった社会の歯車として生きていかなくちゃいけないと思うとゆううつだった。
ならば大学に進めばいいじゃないかと思うかもしれないけど…。
学費の問題などかなり厳しい。
確かに高卒よりも大卒の方がこの先有利なことはわかってる。
でも勉強が好きなわけでもないし、ただなんとなく大学に通って親に負担をかけるのはいやだと思った。
家の財政状況の厳しさぐらいはわかっているつもりだ。
我が家みたいな貧乏のひとつ手前みたいな家庭の子供は、大学なんて行かずに高卒で働いて一生低い給料で我慢しなくちゃいけない。
絶対にニートにはなりたくないからまじめに仕事は探すけど、人間の生き方としては負け組決定のルートだ。
周りの大人は「若いんだから何でもできるよ!」って言って無責任な希望を与えてくれる。
ぼくはそんな大人たちに言いたい。
「あんたたちだって若くて希望にあふれていたときがあったのに、今は貧乏の一歩手前の生活をしているじゃないか!」と。
もし病気になって働けなくなったら、半分世捨て人みたいな生活をしなくちゃいけない…。
そんなリスクと常に背中合わせで、定年まで高卒の低い給料で働き続けることのどこが希望なのだろうか?
クラスの連中を見ていてもよくわかる。
勝ち組なのはほんの一握りで、あとは程度の違いはあれど全員負け組。
人生ってつまらない。
あの日が来るまではそう思っていた…。
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