九我刑事の事件ノート【殺意のホテル】
「まず、双葉南さんの殺害についてです。
四井さんの証言より、双葉さんの死亡推定時刻は午前2時頃とみていいでしょう。
双葉さんは就寝前に、犯人に呼び出されプールまで行きました。
そこで、飛び込み台の上から犯人に『飛び込ませられた』のです」
「――…!!」
辺りが騒ついた。
辻が質問をする生徒のように手をあげる。
「双葉南さんの遺体の落下地点は飛び込み台からずいぶん離れています。
勢いよく飛び込まないと、あんなに離れた位置には落下しないと思いますが」
「犯人に飛び込ませられたなら、そんなに勢いよく飛び込むかね」
「……正確に言えば、双葉さんは『自分から飛び込んだ』と言ってもいいでしょう。
ポイントは、この目薬です」
彼方はビニールの小袋に入った目薬の容器を掲げた。