九我刑事の事件ノート【殺意のホテル】
仕事があるから、と八部と別れ、私と兄は再び目的地へと歩を進めた。
途中、廊下いっぱいに広がる窓の外側に、温水プールのドームが見えた。
けっこう広くて、飛び込み台まであった。
ホテルに面している側のドームはガラス張りになっていて中の様子が見えるのだ。
「あっ!あの人みたことある!」
私は思わず、飛び込み台の上に米粒並みの小ささで見えた女性を指差した。
今まさに飛び降りる寸前だろう。
自殺ではないので要注意。
隣で兄が目を細めながら女性の姿を確認する。
「美容外科医の双葉 南(フタバ ミナミ)だろう。
最近よくテレビに出てるからな。」
そう、最近朝のニュースやお昼の情報番組などに引っ張りだこの美人美容外科医。
私が見た最近の双葉南は、タモさん司会のあの番組だ。