九我刑事の事件ノート【殺意のホテル】
「元気でいいねぇ、若い子は」
フォークをくわえて上下させながら八部は湊の後ろ姿を見送った。
「そうか?
元気が取り柄な若者はイタイぞ」
「もうすぐ三十路越える僕らだから言えることじゃないの」
「ふん」
ケーキを選ぶ湊を横目で眺めながら彼方はコーヒーを啜った。
「格好いいねぇ彼方くん、相変わらず」
笑い声を漏らしながら八部はフォークを置いた。
甘党な彼はコーヒーではなくコーラを所望。
夕飯にコーラかよっ、と誰からも突っ込まれるが気にしない、絶対に。
「缶コーヒーを啜りながら視線は窓の外…そんなイケメン彼方くんは一体何人の女性を切ったことか…」
「死ね甘党。余計なことを」
「あっ、どうせなら高校時代の彼方くんの恋愛事情を湊ちゃんに話して聞かせようかねぃ」
「やめろ本気で息の根止めるぞ」
「今度焼き肉おごって」
「刑事ゆする気か。
逮捕するぞ」
「冗談冗談っ」