九我刑事の事件ノート【殺意のホテル】
「あの、警察の方がどうして…」
おろおろした様子で五家宝は尋ねた。
「仕事ではありません。
非番で、妹とふたりで遊びに来ただけですよ」
既にテーブルに戻っていた湊を顎でしゃくって見せた。
湊が軽く会釈をする。
「そうですか、安心しました。
また一条がなにかやったんではないかと…」
「……また?」
「ああ、いやいやいや!」
四井はやけに落ち着かない様子。
五家宝が心配そうな眼差しを彼に向けた。
顎髭をさすりながら、四井は続ける。
「どうか聞き逃してください、大したことではないんです」
どの尺度で大したことはないと判断するのかは知らないが、これ以上訊いても答えないと判断し、彼方は「そうですか」と返した。
「どうもご迷惑おかけしました。
五家宝くん、私も自室で休ませてもらうよ」
「はい、四井先生…」
四井は先の3人と同じく、食堂の出口へと真っ直ぐ歩いていった。