九我刑事の事件ノート【殺意のホテル】
「ちなみに、一条先生がそんな弱みとなるような写真の正体に心当たりはありますか?」
彼方はトランプを集め、器用に切りながら言った。
うーん、と五家宝は首をかしげて唸る。
「先生は臓器移植について多くを研究していらっしゃいます。
それについて、何度か他の先生と言い争っていたのを見たことがあるんですが…」
それが直接なにというわけではないらしく、ずいぶん自信がなさげである。
弱み、写真ときて連想しただけであろう。
「その会話内容は聞いたことありますか?」
「はっきりとは…。
ただ、2年前がどうとか話していました」
「2年前。」
眉間に皺を寄せたまま、ある程度トランプを切ると4人に順番にカードを配る。
「もうババ抜きにしよっ、九我にはポーカーなんて適わないから」
「賛成賛成っ!」
彼方は喚く八部・湊に特に返事もせずにカードを黙々と滑らせた。