九我刑事の事件ノート【殺意のホテル】



やけに『2年前』が絡む。

余計に当時報道された明共大学の事件が気になった。



「五家宝さん、その2年前って、明共大学でなにか大きな事件ってありませんでしたか?」


彼方の問いに、五家宝は目を丸くしてカードを整理する手をとめた。

さぁ、と答えるだけであったが。



代わりに七瀬が唸りながらそういえば、と続ける。



「2年前といやあ、近くで事故があったな。

海岸の崖から女が一人海に転落したらしくて」


「それはそれは…。」


「たまたま一条先生とうちのオーナーが発見者らしくてな、海から引き上げて病院に運んだものの手遅れだったと聞いたなぁ」



「そうなんですか…」



見知らぬ女性とはいえ、誰かの死に関する話題にその場の空気が重く固まった気がした。

彼方だけはどこふく風でカードをまとめながら、しかし考えを巡らせる難しい顔をしている。



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