九我刑事の事件ノート【殺意のホテル】
そんな空気を察してか、七瀬は苦笑いを浮かべて頭をかいた。
「いやいや、悪いな。
余計なことをべらべら喋っちまった。
じゃあ年寄りはこれで失礼するかな。」
「お疲れさまです、七瀬さん」
「ああ、また明日」
夜だというのに口笛を吹きながら七瀬幸三は去っていった。
食堂の出口付近に取り付けられた時計は、すでに21時を回っていた。
「お茶でも淹れてくるよ、俺。
スタッフルームに紅茶あるから」
八部が立ち上がった。
「近くに厨房があるじゃんか。
厨房には茶はないのか?」
「そこは七瀬さんの聖域なんで、無断で入ると鉄槌がくだるんだよ」
冗談を言いながら、八部は食堂を出ていった。
「私、ちょっとお手洗いに」
五家宝も続けて席を立った。
ババ抜き用に配ったカードを伏せもしないで行くものだから、湊は見ないようにとその手札を裏返した。