九我刑事の事件ノート【殺意のホテル】
手札になにかを発見した彼方。
黒と白で描かれた、不気味な顔した道化の図柄。
ジョーカーが当たってしまったらしい。
「なんまいだぶなんまいだぶ」
口にした台詞とは裏腹に彼方はジョーカーを抜き取ってこっそりと五家宝の手札に混ぜた。
「あっ、ちょっと兄さん!」
「ババ抜きだけはな、だめなんだよ。
一旦ジョーカーが当たると必ず負けるというジンクスがある。
ここはやはり、全員が勝てるという条件下でやらなければな」
「刑事がいいんですか、イカサマなんてやって」
「イカサマじゃない。
勝てる可能性を求めただけだ」
「……はぁ」
相変わらずガキくさい。
顔に似合わず負けず嫌い、ゆえにいつも一番を求める。
「私が負けたら恨んでやるからな」
「結構なことだ。
所詮はゲーム、神様が決めた法則に基づき誰が勝つか負けるかは25%平等だ」
「はいはい」
かくして、彼方が圧勝を決めるカードゲーム大会は再び幕を上げたのである。