九我刑事の事件ノート【殺意のホテル】
やっとこさ彼方を起こして着替えさせる。
ネクタイをしめないスーツ姿がお決まりの彼方であるが、水泳合宿を建前としているゆえに本日は適当なパーカー姿。
細い身体もだぼだぼのパーカーを着れば多少は大きく見える。
猫が毛を逆立てて身体を大きく見せるのとなんら変わらない話だが。
「なんで朝早くに起きなきゃならないんだ、貴重な非番二日目なのに…」
「その貴重な非番を私の水泳合宿にあててくれたのはどこの誰よ」
目を擦りながら洗面所に立ち、無駄にたくさん歯みがき粉を着けてシャカシャカと始めた。