九我刑事の事件ノート【殺意のホテル】
県警警部、十和田純一郎。
いかにも刑事らしい鋭い目を光らせながら現場のプールを一通り観察する。
ベージュの上着は皺が多く、履いている靴もだいぶ傷がついていた。
双葉南の死因は溺死ではなく頭蓋骨の骨折によるものであるという。
遺体は、額側から骨折が見られたために自殺の可能性もなくはないが、死んでからプールに水を入れられたと考えられるために、他殺の線が濃い。
「ホテル従業員の八部大翔さん。いま、ホテルに滞在するスタッフと客はほぼ全員食堂に集まっているとのことです」
「うん。
では話を聞きに行こう」
十和田は新人刑事を連れてプールを後にした。