九我刑事の事件ノート【殺意のホテル】
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一条晴臣部屋前。
「一条さーん、一条さーんっ」
彼方は部屋をノックし続けるが、まったくもって応答がない。
「寝てんのかなぁ」
「さすがに気付くだろ、もう何分呼んでると思ってんだ」
なおも一条を呼び続ける。
グーで扉を叩いてみても反応はない。
そこに、新人刑事、辻一が到着した。
全速力らしかった彼は、彼方と八部の前に現われてから荒々しい息を整える。
「はぁ、はぁ…
えっと…第一発見者の八部大翔さんというのは…」
「自分です」
八部が手を上げた。
「そちらは?」
辻は彼方に目を向けた。
「九我彼方といいます。
今日はこのホテルに客として来ました」
「そうですか。
……で、一条さんというのは」
「このお部屋のお客様なんですけど、呼んでもなかなか返事がないんです」
彼方は再度一条を呼びながら扉を叩いた。