九我刑事の事件ノート【殺意のホテル】



*****


一条晴臣部屋前。



「一条さーん、一条さーんっ」


彼方は部屋をノックし続けるが、まったくもって応答がない。


「寝てんのかなぁ」

「さすがに気付くだろ、もう何分呼んでると思ってんだ」


なおも一条を呼び続ける。

グーで扉を叩いてみても反応はない。


そこに、新人刑事、辻一が到着した。



全速力らしかった彼は、彼方と八部の前に現われてから荒々しい息を整える。


「はぁ、はぁ…
えっと…第一発見者の八部大翔さんというのは…」

「自分です」


八部が手を上げた。


「そちらは?」


辻は彼方に目を向けた。

「九我彼方といいます。
今日はこのホテルに客として来ました」


「そうですか。
……で、一条さんというのは」


「このお部屋のお客様なんですけど、呼んでもなかなか返事がないんです」



彼方は再度一条を呼びながら扉を叩いた。



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