九我刑事の事件ノート【殺意のホテル】
四井:捜査①
「失礼しました。
自分、警視庁捜査一課の九我と申します。」
警察手帳を見せて彼方は自棄に淡泊な口調で名乗った。
本物の警察手帳を見て、十和田は切れ長の目を精一杯に見開いて驚いている。
「警視庁……ああ、いやいや、まさか同業の方がいらっしゃったとは。
県警の警部をしております、十和田と申します」
十和田は手慣れた動作で敬礼をした。
緊迫感を適度にまとったベテラン刑事の動作である。
容疑者に入るかもしれない彼方であるが、一条の部屋にも入った捜査員たちの中に違和感なく溶け込んでいる。
辻に関しては、明らかに年下の彼方に対してだいぶ恭しい態度をとった。