九我刑事の事件ノート【殺意のホテル】
彼方は次いで白いクローゼットを開けた。
ジャケットとズボンが一組、そして一条のイメージに合わないトレーニングウェアが一着。
「ウェアだ」
取り出してみると、トレーニングウェアはずいぶん皺になっていたし、じっとりとした湿気も伝わってきた。
最近使われたのだろうか。
「一条氏はスポーツをする人間だったんですかね」
背後からウェアを眺めて、十和田がぽつりと呟いた。
「それはわかりませんが…でも双葉さんは水泳やっていたんではないでしょうか。
昨日、プールの飛び込み台から綺麗にプールに飛び込む彼女を見ましたから」
「ほう…そうですか」
十和田は顎をザリザリと撫でながら相槌を打った。