九我刑事の事件ノート【殺意のホテル】
「扉側の格子窓から鍵を投げ入れるってのは無理ですかね。」
辻は、破れた格子窓を指差して言った。
彼方が首を横にふる。
「格子は斜めに切られたデザインですから、真っ直ぐ投げては部屋に入りません。
第一、物理的に野球選手がやったとしても綺麗にテーブルまで届く可能性は低いですよ」
「あ…そうですね」
辻は怒られた犬のように肩を落として悄気ている。
まあまあ、と十和田がその肩を叩いた。
「でも、糸かなにかをテーブルまで引っ張って鍵を置くことも可能かもしれませんね。」
彼方の発言にフォローの意図はない、断じて。
「しかし糸を回収する方法が…」
うーん、と唸って彼方はひとり考え込んでしまった。