九我刑事の事件ノート【殺意のホテル】
「一条氏の自殺説もそうですが、自殺するならここから飛び降りた方が早いです。
自殺しようとする人間が、本来はプールの水に飛び込む飛び込み台に自殺場を選ぶのは不自然ですし。
プールの水は飛び降りた時点では抜かれていたわけですが、わざわざ水を抜いてプールに飛び込む理由はありません。
加えて、プールに飛び込んで死んだ人間に水を再度入れる方法はありませんよ」
「共犯がいたとか!
例えば…五家宝さんや三枝氏、四井氏とか!
一条を殺害した後に双葉は共犯の誰かに助けを求めた。
『大変なことをしてしまったわ。私プールに飛び込むから、後から水を入れてちょうだい』……とか!」
「プールに水を入れる理由は?」
「水の中で死にたかった!」
「なら尚更、目の前の海に飛び込みませんか。
水を抜く手間はいらないし」
「ですよねぇ……」
再び辻は悄気犬状態に陥った。
十和田がそんな彼の肩を叩いたのは言うまでもなく。
「そうだ、隣は双葉さんのお部屋なんですよね。
見に行きましょうか」
「えっ、ああ、そうですね」
すっかり彼方ペースで捜査を進める。
次はプールから転落した双葉南の部屋である。