九我刑事の事件ノート【殺意のホテル】
宍戸:捜査③
双葉の部屋も一条同様、荒らされた形跡は一切なかった。
鍵はきちんとかかっており、双葉のボストンバックから発見された。
部屋の造りは一条の部屋とまったく同じ。
テーブルの上も殺風景だった。
辻は、窓から一条の部屋の方を見た。
やはりベランダが無いため飛び移るなんて業は不可能と思われる。
先ほどの辻の推理に、『双葉が犯人なら密室を作ったことになる』という問題が加わった。
自殺しようとする人間がそんな冷静なことを思い付くわけがない。
「もう八方塞がりじゃあないですかぁ」
泣き声を上げながら、辻は潮風が吹き込む窓を閉めた。