九我刑事の事件ノート【殺意のホテル】
「九我刑事、プールの照明がなにか?」
彼方の跡を追ってきた辻が尋ねる。
「ええ。
どうして双葉さんの落下地点が飛び込み台からずいぶん離れていたかがわかりました。
ただ、証拠はやはり目薬にありますね…」
彼方は飛び込み台に登る。
手刷りに手を添えながら淡々と上っていると、途中でピタリと止まった。
「十和田さん、辻さん!こっちへ!」
彼方が手を振って二人を呼ぶ。
十和田と辻が続けて階段を登ると彼方は手摺りを指差した。
「これ。
刃物の傷ですよね」
見てみると、手摺りの数ヶ所が緑色の塗装を剥がされている。
細く一文字に灰色の部分が露になっていた。
「……た、確かに、言われれば切り傷かもしれませんね。」
「じゃあやっぱり一条氏と双葉氏は同一人物に殺害されたんですかね」