九我刑事の事件ノート【殺意のホテル】
昨夜の2時。
それは、おそらく双葉が殺害された可能性の高い時刻で、一条はすでに死んでいる筈である。
「眠れなくて、ロビーの自販機まで飲み物買いにいった時に…さっき思い出して」
「うん…そっか」
彼方は案外あっさり返事をした。
「やっぱりな」
「…えっ!
ちょ、やっぱりって何!
まさか幽霊だったなんて言わないよね…」
「警察馬鹿にするなよ。
幽霊で事が片付いたら鑑識も科捜研も科警研もいらないんだよ」
「じゃあ、あれは――…」
「…うーん」
どうやら混乱しているらしい湊の肩に両手を置いて、「深呼吸」と息を大きく吸わせた。