九我刑事の事件ノート【殺意のホテル】
「見かけた一条さんは、トレーニングウェアを着てなかったか」
彼方の問いに、湊は眉間に皺を寄せて考え込む。
「…着てた、かも。
布の音が大きかったし、白っぽい服な気がしたし。」
「よし。
じゃあ、部屋に帰ってくるまでに誰か見なかったか」
「…誰も」
「よしよし。
見かけた一条さんはどこへ行ったかわかるか」
「ホテルから出ていった。
階段の上から見かけただけだから会ってはいないけど」
「よしよしよし。
これで一条氏殺害のトリックは読めたぞ妹よ」
頭を撫でながら、彼方はニヤリと笑った。
わざとらしく『トリック』だなんて言うのに、湊は顔をしかめる。