空―鏡の秘密―
わたしがそう呼ぶと、春華(はるか)ちゃんの表情は、ぱぁっと笑顔になる。
春華ちゃんは、わたしが小学校に上がる前まで、よく一緒に遊んでくれた、1つ年上の女の子。
大人っぽいし、優しいから大好きだった。
……ただ、昔の性格と、今の性格は、なんだか違うかも………。
「柊!昇!勇!空ちゃんよ!」
春華ちゃんがそう声をかけると、生徒会メンバーはわたしに駆け寄って来て………
「空!オレオレ!分かるか?」
「あっ…勇(ゆう)くん?背、伸びたね!」
「空ちゃん、僕………」
「昇(しょう)くんも……変わってないなぁ……」
「……空、」
「…柊(しゅう)くん?」
「…揺(ゆら)は…どうしたんだ?」
「…………揺…?」
『揺』。お母さんも言ってた。
「……揺…って…誰…?」
「…空ちゃん…?なに言ってるの…?揺は……」
春華ちゃんが何かを言おうとしたのを、昇くんがさえぎった。
「空ちゃん、もうそろそろ時間だし…話は、放課後しよう。放課後、生徒会室に寄ってもらっていいかな?」
「…えっ……あ……うん……」
「良かった。それじゃ…」
「うん…」
……『揺』。
わたしは、何か大切なことを忘れてる。
…そんな気がした。