浮気な恋人
3
その日は、私のクラブが終わるのをシマが待っていてくれて、陽も落ちかけた時間に、私と彼は同じ電車に乗った。
私の心臓は、罪悪感で、いまにも破裂しそうにドクンドクンと唸っていた。
でも、言わなければならないのだ。その言葉を。
私は、この日いちばんの勇気をふりしぼった。
「あのね。シマ。話があるんだけど」
「ん?なに?」
シマは、人のよさそうな笑顔を浮かべた。
この笑顔を、私はいまから傷つけなければならないのだ。
ああ、疲れる…。早く、時間が経ってほしい。
「私ね。…シマとは、合ってないような気がするの」
「…えっ?」
「………ごめん。でもやっぱり…、ついていけない」
「……何に?」
シマの表情が、一気に曇った。
私は、さらに勇気を叩き出す。
「シマのバンド仲間の世界のこととか。……お酒飲んだりするのも、ちょっと好きじゃないし…」
「…お酒飲んだりしたのは悪かった。ごめん。ミクが嫌ってるとは思わなくて」
「だから、……あのね。私、いろいろ考えたんだけど」
「余計なこと、考えなくていいっていうのに」
「ごめん…。なんか、私、もう疲れちゃった」
「考えすぎだよ」
「いや、そうじゃなくて」
シマは、決して、「別れる」という言葉を、口に出そうとも出させようともしなかった。
そうこうしているうちに、シマは自分の降りる駅で降りられずに、私と一緒に少し先の駅で降りることになってしまった。
私の心臓は、罪悪感で、いまにも破裂しそうにドクンドクンと唸っていた。
でも、言わなければならないのだ。その言葉を。
私は、この日いちばんの勇気をふりしぼった。
「あのね。シマ。話があるんだけど」
「ん?なに?」
シマは、人のよさそうな笑顔を浮かべた。
この笑顔を、私はいまから傷つけなければならないのだ。
ああ、疲れる…。早く、時間が経ってほしい。
「私ね。…シマとは、合ってないような気がするの」
「…えっ?」
「………ごめん。でもやっぱり…、ついていけない」
「……何に?」
シマの表情が、一気に曇った。
私は、さらに勇気を叩き出す。
「シマのバンド仲間の世界のこととか。……お酒飲んだりするのも、ちょっと好きじゃないし…」
「…お酒飲んだりしたのは悪かった。ごめん。ミクが嫌ってるとは思わなくて」
「だから、……あのね。私、いろいろ考えたんだけど」
「余計なこと、考えなくていいっていうのに」
「ごめん…。なんか、私、もう疲れちゃった」
「考えすぎだよ」
「いや、そうじゃなくて」
シマは、決して、「別れる」という言葉を、口に出そうとも出させようともしなかった。
そうこうしているうちに、シマは自分の降りる駅で降りられずに、私と一緒に少し先の駅で降りることになってしまった。