浮気な恋人
空中庭園に入ると、もう空はほとんどうす暗がりになっていた。
ライトが、ロマンティックに恋人たちを照らす。


「そこに、座る?」

「うん」


大地と私は、できたての綺麗なベンチに座った。
彼は、もう私の肩に手を回していた。
はやい!


私は、何を言われるのかと、ずっとドキドキしっぱなしだった。
すると、大地は、こんな話を始めた。


「柴田がさー。寮で、ミクの噂してたの、聞いたことがあるんだよ」

「へぇ?」

「だいぶ前の話。去年の春の合同練習の後だったかな。一緒にサーキットトレーニングやってんのに、1人だけ、さっさと行っちゃう女子がいたって、怒ってたよ」

「えーー!」


私は、恥ずかしさで顔が火照った。


「でも、うちの高校では、先に行っていいことになってるのよ」

「でもさぁ。やっぱ、ちょっと変じゃない?」


私は、何も言えなくて、ただ顔を赤くして足元を見ていた。
なんで、そんなこと、いま言うの?


大地は、どういうつもりなんだろう。
そんな、嫌な女として噂されていた子と、一緒にいたいと思うもの?


大地は、私の顔色に頓着していない様子だった。
この人は、ほんとに、私のことが好きなのかな……?
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