浮気な恋人
「あれ?大地じゃん~。今日の記録、惜しかったねー」


陸上部で親友のエリが、競技場のスタンドで、試合後の荷物をバッグにまとめかけていた私の横で、大声を上げた。


「ああ、エリか。久しぶりー」

「あと2cmでしょー?大会記録まで」

「うん。でもまあ、仕方ないよ。ありがと」

「お茶あるよ。飲んでいけば?大地、ジャスミンティー好きでしょ」


そこで、私は、初めて北小路大地という、県では有名なハイジャンパーを間近で見ることになったのだ。


私は、エリと大地が、親しげに話しているのを、ただ横でぼんやり聞いていた。


エリは、大地と中学が同じで、その会話には、色気もなにも感じられなかった。
だいたい、エリという子は、あっけらかんと、どんな男子とも話せる男らしい女の子なのだ。


「ほら、ミクも」


エリは、私のぶんまでジャスミンティーを、蓋に入れてさし出してくれた。
お茶が、3人をくっつける接着剤となって、私も自然とその場の空気に入ることができた。
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