アダルトチルドレン
父親は物を飲み込む事がなかなか困難になっていたから、杏里は飲み込みやすいように、野菜を細かく切って野菜スープを作った。

それを父親は対して上手くもないのに、
「美味しい…」

といってのんだ…

素直に嬉しかった…

父親との溝が埋まり始めていた…

杏里が仕事前に、
「調子が悪い…」といっていると、自分が一番体調の悪い父親が、杏里の背中をガサガサの手で擦ってくれた…

「あたしは、あなたが辛い時何も出来なかったのに、ごめんね…パパ」と思いながら、父親に擦ってもらった…

杏里が父親を許し始めた頃から、あまり父親が好まなかった食べ物ばかり欲しがるようになった…

それを一生懸命食べていた…

ある時母親が言っていた…
「死に向かいながら生きてる人ってどんな気持ちなんだろ…」

確かにそう思った…

だけど、実際父親は自分自身が一番わかっていたんだね…

夜母親が居ないとき、リビングで父親が泣いてる姿を何度も杏里はみた…

そのたびに、喉があつくなり辛くて二階の自分の部屋で堪えた…

普段は何事もないようにしている父親を見ているのも辛かった…

ある夜、皆で食事をしてる最中に父親が杏里に、
「お前の花嫁姿だけは見たいなー」

「俺は絶対泣くな…孫も俺が世話してやるからな…」

そんな事を家族で食事をしながら話した。


至福の幸せだね…

だけど、そんなのずっと続かないんだよ…

また父親の様態が急に悪くなり入院がきまった…

母親もまた苦しい生活が始まるのかと思いきって医者に聞きにいった…
あたしは待合室で待っていた…
「あと、どのくらい生きられるんですか?」

母親はそう医者に尋ねた…
医者の答えは…
「3ヶ月です…」
母親は、
「パパにも弟にも言わないで…」それだけ杏里にいった…

辛かっただろうな…
だけど母親は働かなくてはならなかったからね…

この時の私たち家族の口癖は、
「お金なんて、何も要らないから幸せに暮らしたい…」だった。
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