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第1章

ヒトメボレ

「あ~、今日も部活死ぬかと思った。」

「だよねー!!奈々は死んだからぁぁ~~!」


部活終わりの帰り道。
走りすぎて鉛のように重くなった脚を部活仲間の奈々と運ぶ。
紗希は何だかんだで部活から開放されるこの時間が好きだった。
もう12月なので、帰りにこっそり買うココアは格別においしかった。
―阪本紗希―
来年受験の中2の11月の終わりだっていうのに勉強に全く手をつけないある意味の勇者。
悩みといえば部活で毎日毎日休みがなくて、鬼のような顧問にしごかれてるのがつらいってぐらいのごく普通の中学生。
恋愛感はじぶんでも分かるぐらいおかしい。
気になる人がいれば告白して、出会い系でイケメンを探して暇さえあれば遊んでいる。
でもそうなってしまった理由は分かってる。
小学生の頃からずっと好きだった男の子に2年生になる時の春休みに振られたこと。
おとなは「そんなことで人生を棒にふるな」なんて言う。
だけど紗希にとって“そんなこと”じゃすまされないことなんだ。


しばらくして奈々と別れ、家のドアを開ける。
すると何故か玄関にお母さんが立っていた。


「ただいまぁ~」


すると疲れている紗希の気持ちも知らずにお母さんは恐ろしいほど高い声で話し始めた。


「紗希~~っ!!台湾行くわよ!タ・イ・ワ・ン」


は?
何を言っているんだ、
あまりに突然のことに目を丸くする紗希。


「ちょっとまってお母さん、全く話が読めないんだけど」


頭が混乱する紗希を無視してお母さんがまた話し始めた。


「だからね・・・・」



話を聞くと、3コ下の弟・・・
雅が野球の東京選抜に選ばれて台湾にいくらしく、それに紗希達も一緒にいくらしい。



「ちょっとまってお母さん」


お母さんがべらべらと楽しそうに話しているのをとめたから、お母さんは少し不機嫌そうになった。
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