兄と私と弟と。
「泣くなよ‥馬鹿」
そう言うと
楓斗は優しく包み込むように抱き締めた。
街歩く人々の視線は
私たちに集中する。
でも
そんなのどうだって良かった
この優しい温もりが欲しかったんだ。
「ここじゃ無理だけど‥‥‥帰ったらキスしてやるよ」
私にだけ聞こえるように
私の耳元で囁いた。
ねぇ
少しだけ
ほんの少しだけ
期待してもいいかな?
胸がいっぱいだった。
楓斗が来てくれたことが
すごく嬉しかった。
「そろそろ行こうぜ」
私は楓斗が差し出した手を借りて立ち上がる。
立ち上がってからも
楓斗は手を放さなかった。
だんだんと指を絡める繋ぎ方になっていた。
「今日だけ‥‥な?」