それぞれの一週間【完】
飲み物代、とテーブルに叩きつけた320円。小銭が多少手の中で暴れるのが分かる。
……不覚にも。
波瑠とかち合っていた視線を逸らす瞬間、涙が出てしまった。同時に波瑠の目が大きく見開かれたのもハッキリと見た。
急いでファミレスを飛び出した私。そこで初めて気が付いたけど、外はしとしとと雨が降っていた。傘、ないし。
今日に限ってバッグの中に折りたたみ傘は入っていない。そう言えば、昨日抜いたんだっけ。
なんで抜いた私。
はあ、と吐いた溜め息。白いシャツが雨にうたれ肌に張り付く。鬱陶しいことこの上ない。
「あれ、愛菜さん…?」
と。
私の名前を呼ぶ、凛とした通る綺麗な声。この声には何度か聞き覚えがある。