それぞれの一週間【完】
「…命令すんな。」
キッと睨みつけ、そう呟くと波瑠は困ったように笑って謝る。さっきの強気はどこいった、と突っ込みたくなる男だ。
…涙は止まったが、おそらく目が赤くなっているはず。取りあえず、…今は波瑠と会いたくはなかったのだが。
「愛、どうしたの?」
「…知らない。」
「知ら、…愛、ごめん俺が何かしちゃったんだよね?」
「…。」
「愛、話してほしい。」
「…。」
「お願い、愛菜、愛してるんだ。」
「…波瑠、の、馬鹿…!」
そっと重なった唇の熱がアツイ。触れるだけの口付けは小さなリップ音を閑静としたこの空間に酷く鮮明に響いた気がした。
一瞬にして私の頬は紅潮。まだ、ここ玄関前なのに、もし誰かに見られでもしてたら消えたい。
――…波瑠は、それはそれは綺麗に微笑んで見せると、ゆっくり口を開いて言の葉を紡ぐ。
「愛、話して…?」