それぞれの一週間【完】
さて、と。
俺も仕事に戻らないと。
休憩室の扉の前、また俺の携帯がジーンズのポケットで震える。
愛菜からの、メール。
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バカでしょ。
まあ、期待してる。
14:30に予約入れてるから、また後で。
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うん、また後で。
俺は携帯に向かって微笑むと、休憩室を出た。
数時間後、店のドアが開かれ、心地良い来客を知らせるカウベルの音が店内に鳴り響く。
長い黒髪を揺らして、入ってきたのは俺の愛しい人。
「いらっしゃいませ。」
「様になってるね。」
「そりゃあ、美容師ですから。」
愛菜はふふっと綺麗に笑うと、俺が差し出した手の上に自分の右手をのせる。
「可愛くしなきゃね。」
「いつも通りで結構。」
「そんな勿体な、」
「いつも通りで。」
「…。」
《強気な彼女の頬は少し 赤かった。》
-END-