それぞれの一週間【完】

-暗夜の贈り物-




虫の声、物音ひとつ聞こえない閑静な(別の言い方をすれば寂しい)夜。


私は、一人アパートの部屋でソファに膝を抱えて腰掛けていた。小さなテーブルの上には、淹れたての珈琲が香ばしい香りと湯気を登らせている。





―――…あと、10分



「…寒い。」

ぽつり、呟いた声は閑静なこの部屋にやけに響いた。


先程よりも強く、自身の膝を抱える腕の力を強める。小さく、小さく。

珈琲を香りごと喉に流し込めば、体の芯からほっと温かくなる。





―――…あと、7分



カチカチカチ…

時計の秒針が進む音に耳を傾け、暇を潰そうとする私。それは無駄な努力と誰かに言って欲しい気にさえなる。


早く、早く、時間が過ぎてくれないかと視線はそれを捉えたまま。



こんなに、待ち遠しい気持ちはきっどあいづだから。





―――…あと、3分



嗚呼、もうすぐだ。

もどかしいような気持ちはピークに達している。


私は、ぬるくなった珈琲を一口飲み込んだ。


膝を抱えていた腕がそろそろ痛くなってきた。その力を解き、足を投げ出し遊ばせる。


< 126 / 151 >

この作品をシェア

pagetop