それぞれの一週間【完】
-暗夜の贈り物-
虫の声、物音ひとつ聞こえない閑静な(別の言い方をすれば寂しい)夜。
私は、一人アパートの部屋でソファに膝を抱えて腰掛けていた。小さなテーブルの上には、淹れたての珈琲が香ばしい香りと湯気を登らせている。
―――…あと、10分
「…寒い。」
ぽつり、呟いた声は閑静なこの部屋にやけに響いた。
先程よりも強く、自身の膝を抱える腕の力を強める。小さく、小さく。
珈琲を香りごと喉に流し込めば、体の芯からほっと温かくなる。
―――…あと、7分
カチカチカチ…
時計の秒針が進む音に耳を傾け、暇を潰そうとする私。それは無駄な努力と誰かに言って欲しい気にさえなる。
早く、早く、時間が過ぎてくれないかと視線はそれを捉えたまま。
こんなに、待ち遠しい気持ちはきっどあいづだから。
―――…あと、3分
嗚呼、もうすぐだ。
もどかしいような気持ちはピークに達している。
私は、ぬるくなった珈琲を一口飲み込んだ。
膝を抱えていた腕がそろそろ痛くなってきた。その力を解き、足を投げ出し遊ばせる。