それぞれの一週間【完】
あいつが帰ってきたら、文句の一つでも言ってやろうか。
まあ、待つ側は何だか寂しいものである。
―――…あと、37秒
カンカンと、鉄の階段を登ってくる音がした。
―――…あと、18秒
その音が消えた。
―――…あと、10秒
鍵穴に鍵が差し込まれた音に続き、ドアノブが回される音。
―――…あと、3秒
フローリングを踏みしめる足音。そして、玄関とリビングを区切るドアが開かれた、音。
ゆっくり、振り返る。
―――…暇潰しは、おしまい。
「ただいま、愛菜。」
「波瑠、…遅い。」
開口一番は文句からという。私というやつはほんとに可愛くない女だ。
と。
クスリ、そんな音が私の耳に届く。見上げれば、その顔には意地悪そうなそれ。開かれた口からは、寂しかった?って…。
……………負けた。頬を赤く染めながらも睨みはやめず、だが呟く。
「お帰りなさい。」
「ただいま。」
暗夜の贈り物は、彼氏か らのただいまのキス。