それぞれの一週間【完】
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《初めまして、のふたり 》
微かに耳まで届くのは心地良い、小さな鈴の音。ちりん。と鳴るのが聞こえる度私はそっと瞼を下ろし、それに耳を澄ます。
「あ、こんにちは。」
そのハスキートーンの声に、閉じていた瞼を持ち上げれば。ふんわりとした雰囲気を纏う男。
彼の足元には、茶色の毛をした可愛らしいプードルが一匹。
「こんにちは。今日は、お早いんですね?」
――そう言ったのには、わけがあって。と言ってもいつもより2時間ほど早いというだけの話だ。
彼はハハッと困ったように笑うと、「不純な動機、ですよ」と呟く。
それに首を傾げて見せれば、笑顔で流されてしまった。
アパート一階のベランダと、低い塀を挟んだ道とで交わされる会話は毎日、AM 10:00~10:30の間。
私は、犬を散歩させている彼に一目惚れをしてしまった馬鹿な女である。
「三吉さん、甘いものはお好きですか?」