それぞれの一週間【完】



ただただ、三吉さんの顔を見つめる私。

三吉さんはふっと笑うと優しい声色でゆっくりと言の葉を紡ぐ。


「この時間、芦屋さんはいつもベランダにいる。どうしてですか?」

「(どうしてって…。)」



そう言う三吉さんの笑みは、どう見ても確信犯的なそれ。分かってるくせに、Sなのかこの人。


緩く吹いた風が優しく頬を撫ぜる。



ちりん。

三吉さんの愛犬の首輪に付く、小さなあの鈴の音がした。


どきり、どきりと。心臓がスピードを上げながら胸を強く打つ。あの鈴の音は私に何を伝えようとしているのか。

それはきっと………、





「あなたを、待っているからです。」



゙恋の訪れ゙

そして、

゙恋の始まり゙でも伝えようとしていたんじゃないだろうか。



「芦屋さん、一緒に散歩しませんか?」

「はい。」


ちりん。

緩い風がまた、あの心地良い鈴の音を私達のもとへと運んできた。




さあ、2人の思い出をつ   くろうか。


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