それぞれの一週間【完】


声が聞こえたと同時に。額に走る鈍い痛み。


「…健ちゃん。」

「挨拶は大切に。」


まるで保護者か先生だ。デコピンされた場所をさする私に、制服を軽く着崩した幼なじみは笑う。

その姿までかっこいいものだから、たまらない。

(あれ?確実変態?)


「けーん!」

「おお拓真。じゃあな梨奈。挨拶は大切だぞ。」


最後に重要なキーワードと言わんばかりに声のボリュームまで上げて言ってくださった。私の幼なじみが。


友達と楽しそうに話す後ろ姿をただただ見つめていると、隣の当番の男子が「怖っ」と呟いてきたから、右アッパーをお見舞いしておいた。



健ちゃんは無視しない。大体学校とかで話しかけるな、とかいうパターンが多いけど。

健ちゃんの場合、あちらから話しかけてくる。


それが嬉しくて待ち遠しい。



私の大好きな幼なじみは私の気持ちに気付いていないと思われる。そして挨拶を大事にします。

< 21 / 151 >

この作品をシェア

pagetop