boyshな女の子
「無視してんな!」
「黙ってろや」
いつもより数段低い声と睨みで紀田に口を閉じさせる。
台本に集中を戻す。
俺が覚えなければいけない台詞は全部で10個ほど。
伏線みたいなかんじで最後にちろっと出る感じだった。
これぐらいなら、いけるか……?
周りのセリフもよく読みこの弟の偶像を練り上げていく。
その勝手なイメージで、どんな気持ちでこのセリフを弟は言うのか考える。
そうしたら、けっこう簡単に覚えることが出来た。
何も見ずにもう一度その周りのセリフも一緒に暗唱する。
大丈夫と確信を持った時監督に呼ばれた。
「急にお願いしちゃって悪かったねー」
「(急過ぎんだよ、)」
「なんか言ったか?」
「いいえ?」
一番の腹黒はやっぱり監督だー…。
「俺演技なんてやったことないんですけど……」
「大丈夫大丈夫。 こっちで演技指導はさせてもらうから」
そう言われて少し安心する。
ぶっつけ本番で素人に演技させるわけないもんな。