boyshな女の子
今の時間帯なら、丁度昼休みに入るか入らないかぐらいで教室に混ざれるかと見当をつける。
そうして、ふと思い出す。
この間もこんな時間帯に水城に拉致られたということを。
「…水城、かぁ」
あの日以来会っていないあいつの姿を思い浮かべる。
「若干気が進まなくなってきた……」
あんなことをされた後じゃ誰だって気まずいように思うはずだ。
しかも俺逃げたしな……。
だから、
教室に行くのが怖い。
水城と顔を合わせるのが怖い。
どうしたら合わせずに済むか…と悩みながら靴箱を開いた瞬間閃く。
今日はもともと撮影が入ってるから休みますと言ってあったし、それに俺はまだ誰とも会ってない。
=誰にも知られずに帰れる。
よし。
「帰ろう」
「帰っていいわけねぇだろ」
頭を強めにはたかれる。
「紀田ぁ…お前まだいたのかよ」
「……いくら呼び捨てでもいいと言ったとはいえ、目上の方への気配りは忘れんな」
苦言は聞いてないふりでさっさと下駄箱の方に体を戻す。
チラと後ろを伺うが紀田はそのまま立っている。
これは教室に入るまでいつまでも見張ってるんだろうな…。