月夜の天使
詩苑がグランドピアノの蓋を開ける。

「僕の曲聴いてくれないかな?」

「え?」

詩苑がピアノの椅子に座り、加奈を見つめる。

「高月くん、ピアノ弾けるの?」

「ああ、アメリカで習ってたからね」

「聴きたいわ。弾いてくれる?」

詩苑がふうっと息を吸い込む。

指が旋律を奏で始める。

哀しい旋律。

なんだかとても切ない。

愛しい人を想っても叶わぬ恋。

詩苑の指からそんな想いが溢れる。

・・・魂が、揺さぶられる。

ポロン・・・。

曲が終わり、詩苑はゆっくりと顔を上げる。

「この曲なんていうの?」

「永遠に届かぬ恋」

「素敵な曲ね」

「明日、『月夜の天使』の劇中にこの曲を弾くよ」

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